甘酒の『個性』

 

 甘酒には大きく分けて、米麹甘酒と酒粕甘酒の2種類があります。酒粕甘酒には、少量ですがアルコールが含まれているのでわんこにはあげられません。『お米と米麹だけでつくった わんこの甘酒』は、名前の通りお米と米麹だけで作った米麹甘酒ですから、もちろんアルコールフリーでお砂糖も入れていません。

 同じ米麹甘酒でも、メーカーさんによって味や香りが違いますね。私も、いろいろなところの甘酒を飲み比べていますが、それぞれに違いがあると感じています。では何がそのような違いを生み出しているのでしょうか?『お米と米麹だけでつくった わんこの甘酒』をつくっていただいている、明治末期創業の醸造会社さんに聞いてみました。

 まず、米麹を作るためには種麹が必要です。全国に数社しかいない“種麹屋さん”から購入するか、自前で培養するか。その種麹も、お味噌に向いているもの、甘酒専用のものなどなど種類がたくさんあるそうです。お味噌屋さん、お醤油屋さん、甘酒屋さんなど各社がそういった種麹を仕入れる際に、自分のところの商品や味を作るのに、いくつかの種麹をブレンドするということなので、この辺りに味や香りの『違い』の元がありそうです。

 

 『お米と米麹だけでつくった わんこの甘酒』が作られる醸造会社さんでは、京都にある老舗種麹屋さんで数種類の種麹を仕入れてブレンドしています。ちなみに、そちらの種麹屋さんでは、種麹のつくり方・育て方は、門外不出、一子相伝で代々伝えられているそうです。長い長い伝統と日本の食文化の奥行きを感じますね。

 では、種麹さえあれば米麹は簡単にできるのかというと、もちろんそうではありません。

 “三日麹”といって麹を作る工程は、三日間が長すぎず短すぎずちょうど良いそうです。蒸したお米に種麹をまぶし、麹が育ちやすい寝床を作ってあげる工程です。麹は発酵して熱を発しますが、とてもデリケートなので温度が高くなりすぎると死んでしまいます。“手入れ”と言って、適温になったらそれ以上温度が上がらないように麹を揉みほぐし、寝床を整えてあげる作業を三日間続けなければなりません。そして、三日目、寝床から出すのは朝の3時。熱を持っているので早く出して冷やしてあげなければならないのです。なんとも手のかかる子ですね。

 さらに、“蔵癖”という耳慣れない言葉が出てきました。これは、酒蔵や醸造所の建物や道具に住み着いているさまざまな菌が、麹の働きを助け、その蔵の味を作り出すという、蔵の個性。何年も何十年、何百年もの年月を経て育てられた、その蔵にしか出せない風味を表す言葉でした。ちょっとかっこいいですね。

 独自ブレンドの種麹と蒸米から作る米麹をふんだんに使い、歴史に育てられた“蔵癖”の手伝いもあって、『お米と米麹だけでつくった わんこの甘酒』の風味が出来上がるのかと思うと、感動的ですらあります。

The Moonlight Dog & Co.

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